無理
和田カマリ

ギザギザの鋏が切り分ける
夕暮れ時の空と山を
営業車に乗って
ただぼんやありと見ていたら
早く家に直帰して
キッチンに立つ妻を
背後から抱きしめたくなった

フロントガラスの映像が
ほとんど白黒になった頃
いつもの場所に路駐して
小走りに急いで
マンションの鍵を開けた

おかえり
とか
暖かめの言葉を期待していた

しかし
真っ暗だ
メモが置いてある

さようなら

こうして
若い妻は出て行ってしまった


自由詩 無理 Copyright 和田カマリ 2014-02-11 14:49:21
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