サムラとゴウチ
花形新次

サムラは
父親に期待され
可愛がられて育った
サムラもそれに応えようと
懸命に誠実に生きた
ゴウチは
出来の良い
双子の兄サムラと比較されるのを嫌い
父親に反発するようになった
しかし、心の底では
父親に認められたいと思っていた

ある日
ゴウチは
インチキーナの丘で
オナニーに耽っている最中
突然神の音楽を聴いた
ゴウチがその音楽を
村人に歌って聴かせると
みんな感動し涙を流した
村人はゴウチのことを
天才作曲家だと誉め称えた

ゴウチの噂を聞いた
サムラは
このままでは
父親の関心を弟に
取られてしまうと思い
父親の耳に入る前に
「ゴウチは、他人の曲を
自分の作品だと偽って
人々を欺いている」と父親に話した

父親は
ゴウチを呼びつけ
「お前など私の子ではない
私の目の前から永遠に消え失せろ」と言った
ゴウチは悲しみの余り
両耳にオリーブの枝を突き刺し
二度と神の音楽が聴こえないようにした

だからあ、サムラゴウチは一人なの!


自由詩 サムラとゴウチ Copyright 花形新次 2014-02-10 20:08:22
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