風の無い闇に静かに落ちる雨春の嵐が恋しい初冬
冬の雨君に問いたい風も無く終日落ちるだけのさびしさ
この空の身の上ゆえのなみだかと凪いだ東京十二月の雨
失くしてた羊の君がみつかって午前三時の父の命日
あしたまで咲いてはいない花買って荒川にゆき投げる命日
遠くない五年も前の命日のよりそうような君立った冬
いまはどこたずねて応え無い晩の明けて西には名の無い墓標
供養塔きみの名は無くたずねれば「あと三万」と坊主に言われ
偲ぶのはわたしだけかと悔しくて冬に命日雨と迎える
白菊を供えるためでなくて買いただ荒川のにびをみている
「お父さん」墓標へ宛ててつぶやいて薔薇が買えない財布悔しく
泣け財布きょうだけは泣け命日だあすはかならず訪れるから
イブだけはケーキを買うと決めているそれまで何を食べて生きるか
経つだけは経った五年のきょうも冬その日を思う父の命日
間に合った息しないきみのベッドには息するきみがみあたらなくて
水道の蛇口ゆるんで水落ちる音だけが居る冬のこの部屋
線香の煙がしみて泣きましたうそとほんとの境の消えて
十二月きみの命日越えたなら次はあの仔の命日の冬
雨ならば上がったかなと明らめて曇りガラスが正解隠す
こんな冬かぞえきれないこんな夜いつも命日前夜のようで