遠い送信
aida

星々は金銀の砂子
夜の空はつやつやと黒く輝く
赤く点滅しながら
ゆっくりと渡って行く夜間飛行
その軌跡を追い
憧れは弧を描く

その横顔を思い出す
声 胸 指 その瞳
耳をよぎる吐息を思い出し
何もかもを思い出す
美しい夢を燻らせて
皮一枚で保たれている
脆くて怖い奇跡の卵のよう
その綺麗な寝顔

今どこでどうしているのだろう
見上げる空には不可聴の囁きが満ちて
私はますます孤独になる

夜に落ちながら
夜に昇りながら
空を見ている
立ち揺らぐものを
言葉にならないうちに
モールス信号のように送信する
何処でもない場所へ
あてどもなく打ち上げる
強く遠く何かへと届くように

焦げるような思いもいつか
宙(そら)を行くうちに冷まされ
無我になって惚けて
清潔に燃されてしまうといい
銀色に真っ白にキラキラしながら
夜の砂漠に降るといい
駱駝が行く 月の夜に

行き先の分からない弧が
空を行き交うのが見える
あの線は あの一本は
あなたかもしれない
懐かしい愛しい吾が君

沈黙のまま夜を渡る
傾いていく月は半月
細く翳ってもいき
また黄泉がえりもする


自由詩 遠い送信 Copyright aida 2014-02-08 00:36:00
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