冬の町
Utatane/Nayuta

この町の冬は、お世辞にも美しいとは言えない。


低い空は、一日中厚く険しい雲に覆い尽くされ、

県道沿いに積もった雪は、自動車の排気ガスで茶色がかっている。

人気のない、高齢者ばかりの住宅街に響きわる

灯油売りの軽トラックから流れる雑音混じりの宣伝音が、

この町を包む、喪失感に似た寂しさを、一層強くさせる。

昔賑わいを見せた商店街の店々は、軒並みシャッターが降ろされており、

所々破れかかった張り紙が、近くの山から吹き降ろす北風に、ぱたぱたと揺られている。

何処かの古民家で、首輪に繋がれた柴犬が、ずっと吠えている。

それは、誰かに助けを求める、悲痛な鳴き声のように聞こえる。


僕も君と同じ気持ちだ。


















自由詩 冬の町 Copyright Utatane/Nayuta 2014-02-07 16:38:33
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