神のいたずら
服部 剛

妻が一歳の周をつれて
立ち寄った鎌倉の教会に、入ると
お告げの鐘は、夕焼け空に響き渡り――
グレーのベールを被った修道女等は
晩の聖歌を歌い始める  

祭壇に姿を現したのは  
私達に洗礼を授けてから
新潟に引っ越して農業を営む  
I神父だった  

周を抱っこしながら
聖体拝領の列に並んだ妻は
(まさかここで…)と、息を飲み

眼鏡をかけたI神父の顔に
丸い瞳をじぃっと凝らし
両手に渡された聖体を
ティッシュに包み、ポケットに入れ
家まで車を走らせて
仕事帰りの、僕に渡した  

静まり返った2階の部屋に、入り
丸い聖体を、口に含み
奇遇なる今日の日を  
ゆっくりと噛みしめながら  
舌の上で崩れゆく聖体――

瞳を閉じた僕の心に
沁み通ってゆく、一つの思い

(この人生を、風にあずけよう…)  

神のいたずらは
明日も世界の何処かで
ひょっこりと、日々の狭間に
夢の場面を現すでしょう  










自由詩 神のいたずら Copyright 服部 剛 2014-02-01 22:53:33
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