妖怪
梓ゆい
遠くにある、かすかな記憶を掘り起こし
これが何か?何なのか?が見えず
苦しむ日々を受け入れた・・・・。
その一方で
毎日が透明になり
都庁の上から、空へと消える夢を見る・・・・。
夕飯の匂いに誘われて
立ち止まってみる門前は
決して超えることの出来ないバリケード。
そこにいる自分自身は、何者なのか?が解らぬまま
10m先も見えない住宅街の中を
懐中電灯の灯りで歩き出す。。。
(コーン・コーン・コーン・・・・。)
塀の向こうには、モノノケがいて
一人きりの私を
異次元へと連れ去るのだろうか?
一人しかいないという現実で
怖い・悲しい・寂しい・の三文字に
潰されてゆく・・・・。
「本音を、話したことは無い・・・・。」
「寂しいと、漏らしたことは無い・・・・。」
ただ
感覚という物だけが流れ出し
切り取られた心臓が
道端に落ちている・・・・。
(コーン・コーン・コーン・・・・。)
こびりついた黒染みが
誰もいない四つ角に残された。。