コール
はなおうぎ

街中をうなだれて歩いているとき

あなたの寂しそうな顔が目に浮かぶ

いつも、喜ばせてくれて
そんな顔で喜ばせてくれて
ありがとう
そんな顔して
わたしを喜ばせてくれて

ほんとうにありがとう

わたしがわたしを殺すことから
逃れられない
逃れられないのは…

わたしは思う

ひとはみな、わたしの名前を呼ぶ
自分のいたみでわたしを害するために

だけど、あなたへ

ありがとう

わたしを呼んでくれて
ほんとうにありがとう
わたしの名前じゃなく
わたし自身を呼んでくれて

ほんとうに、ありがとう

街路樹の、根元に落ちている、ひしゃげた、いろはすの
誰にも顧みられないいろはすの残骸の、口からこぼれている

せいりょういんりょうすい

を這いつくばって、舐めた


自由詩 コール Copyright はなおうぎ 2014-01-29 21:57:55
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