「彼岸の鐘」
宇野康平

背骨を震わせる雨は上がり、軒下の猫は子を舐める。

都市に流れる網の目の血管は下に、下に。皮膚を潜っ
て深く。地球は幾度、吐こうとする。

閉ざされた、大勢の人が並んで歩くノイズの重なりは
不思議の河の音のように聞こえ。

目の大小問わず生き物は先に生まれた者の死、後に生
まれた者を守り、死んだ。

彼岸の鐘が鳴る頃、愛したことは皆忘れて夕日を映し
た曇りガラスには、誰も気づかぬ。


自由詩 「彼岸の鐘」 Copyright 宇野康平 2014-01-29 15:47:08
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