キバナコスモス
藤鈴呼




遠く流れた 月の海に
翡翠を ゆっくり 浮かべたら

親不知 弧知らず
抜いた歯が 葉の上 露と きらりんこ

もう 忘れたわ 過去のことなど
琴など弾いて はずみます

ピンポン玉より 上手なの
カラン コロンと 響くのは

宵闇 夕闇 夕涼み
紅色に 染まるのは

今は 見えない 
月の向こうの 物語

オレンジ色の コスモスが
ねぇ 見詰めてよ 笑います

風に そよいで のほほんと
気軽な想い 吹かせます

ふう と はじいた 水たまり
長靴の上 蛙と踊る

アナタ キライと 言ったから
ゲコゲコと哭く 音だけは

聞かせぬように 耳 塞ぎ
餃子みたいと 笑います

肉汁の 溢れるキャベツ 砕いたら
不安も 痛みも 散り散りに

そう願いつつ パチンと つけた
テレビの音で かき消されるは
世摘めと知らぬ 爪切りの音

ボタンと ボンタン 風鈴に詰め
そっと流した 海の奥
陶器の肌が 微笑います

ねえ 冷たいの 哀しいの
あなたの 心 温かいでしょう

ちょっと こちらに つけておいたら
つけものみたいに なるかしら
わたしの こころ うるおうかしら


自由詩 キバナコスモス Copyright 藤鈴呼 2014-01-28 09:13:24
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