凍徨軌
木立 悟







霧を燃して
橋を渡る
斜めの羽の
風はらう午後


遠く枯れた森を乗せ
空と地の歪みは波打っている
二本の指でひらいた手帳に
交互につづく文字と焦げ跡


鉱になり 人になり
再び鉱になり数年すぎた
鼓動は
暮れの曇に似ていた


水がただ水のまま
身動きもせずに流れてゆく
草の原と空
同じ目をして


沈む船の 最期の息
曇の一部を摑むもの
自ら倒れる風のふくらみ
かがやく花を包む手のひら


鉄の歯車をひたす光
原に譜を撒き 微笑むもの
終わらない音楽が連れてくるのは
常に常に冬ばかり


何かに静かに押し戻されて
花は川に近づけずにいる
午後の光 径の光
互いに互いの迷路を作る


鉱が空へ還るときも
水は水を抱いている
息の柱 息の門
寄る辺なきものを受け入れてゆく



























自由詩 凍徨軌 Copyright 木立 悟 2014-01-26 00:07:22
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