目盛の隙間から立ち上る青い炎
hahen
樹上から葉脈だけが
長く垂れて、
神経回路を伝達する
信号みたいな
陽光の、ひと滴が
瞬く
青が広がる
ぼくたちの瞬きも
青くなるから、
この場所はきっと少しだけ、
世界の中心からずれてゆく
膨大な熱量に曲げられた
プラスティックの三角定規
それを手折る前に
たった一度だけの瞬きを、
あなたに乞う
二度とぼくたちは世界を
測量できないだろう
熱量が、ぼくたちにまで
降り注ぐのを、じっと
待つしかないだろう
災厄は避けられないから、
あなたには目を
閉じていてほしい
定規を手にするあなたに、
ぼくは真っ直ぐな青空を
運んで来たい、
歪曲した定規を投げ捨てて、
中心を、ここへ、ずらし
測量が不要になる
そうして青だったものたち
全部、炎の中へ
描かれたもの、全部
とてつもない
放射冷却の、青さ
誰にも語られることのない
色彩が、ゆっくりと、
再び
下降してくる前に
着地点の座標へ
唇を寄せて
枯れ果てた葉脈の
根元から、目盛が、
つぎつぎに並んで
中腹で折れる、
凍えるぼくたちと
いっさいの、
ひずみもなく向かい合い
途切れた数直線の永遠が
たったひとつだけ残された
青の空に溶ける
眩しい、炎が、
全き熱量が冷やされて
あなたはもう一度、
目を閉じる
世界の中心が何処にあるか
きちんと、ぼくたちの
いる場所へ運んで来れたのか
測定するために、
その一点を数値化して
記録するのに、
ぼくたちは再び巨大な
定規を、
持ち出さなくてはいけない
血流で伸び縮みする定規の
果てしない長さを
あなただけが見つめている
ぼくの眼球が、
青空に焼き尽くされて
悶えている間、
とても痛い、
とても熱い、痛いんだ
数値化されて、青く
そしてこおりついた
梢がぼくたちに
瞬きを強いる
とても熱い
あなたはぼくを見て
少しだけ首を、傾げ
涼しく滑らかな
指先で、目盛をなぞっている
青くないもの全て
落下していく世界で、
青に嘔吐して
何度も、瞬きするあなたに
旋律がそして、戦慄が
流れ込んできて
それも数値化された後
燃え上がらないままに、
青く熱く、
旋律が
ぼくの持つ定規を
ひん曲げていく
炎の花弁が
自ら、葉脈と、
幹を燃やして
あなたが最後に、
青に染まりきった
炎の中へ歩いていく
音楽
中心には、majorそして、
minorは要らない
それは均された
青でなくては、
霜柱に覆われた
土塊よりも冷たい
数値としてだけの中心が
ぼくたちの世界を縫いとめている
だからあなたも
けれど、あなたも
この痛みを、この熱を
瞳の中に根差して
枯れ落ちた
炎の大樹が青く
爆発していくまでを、
受け止めなくてはいけない
ずれてぼくたちから
離れていく、世界の、
中心を
ひとしずくの
ひかりで、
ぼくたちが本来あるべき
色彩で、温かく冷たく
もう一度、
描きなおすべきだと
そう思うから
数値のない、
音楽や炎
透明な旋律が
あやまたず、燃え上がる 体系の手つきからすりぬけていく