冬凪
千波 一也



空は
だれの言葉も聴いていない

雪の語りも
風の遊びも
なにひとつ聴いていない


大地は
だれにも組しない

黙りこむ愛にも
困り果てた踵にも
まったく味方しない



掌に
やっとのことで
包み隠した小さな傷は
いまごろようやく
嘘になる

もう
途方もなく嘘になる



夢は
なんにも見ていない

色も形も
位置も名前も
己を生んだ思いの主も
なにひとつ見ていない


波は
どこにも帰らない

ある筈もない暦なら
ある筈もない情けなら
ある筈もない見分けなら

波は
いつまでも帰らない
どこまでも帰らない









自由詩 冬凪 Copyright 千波 一也 2014-01-20 15:50:34
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