オンザレール
末下りょう


首なが族の少女が耳にあてたアイフォンからきこえるウォール街の足音は、ジブンヲカンジョウニ入レズニ通り過ぎるようで

プラットホームにとり残された風が
形の悪い、過冷却の耳を凍らす


(3830番ホーム、透明な現在 行き、列車がまいります。図形を壊さないよう足下の円を踏まないでお待ち下さい)

アルキメデス線2:3号車は96角形の車輪を回転させながら放物線を描き、熱光線のライトを パ、パ、 となにかのシグナルのように点滅させて到着する


黄金のドアが開き
ヘリオスの牛の群れと、大量のユリイカが含む憂鬱とが交錯する浮力を乗せて再びレールを走る
スクリュー
(強弱、点)の発明

ぼくは夢をみるぼくをみる
すると夢はぼくに気づき、ふり返る


ぶらさがる広告(私に支点を与えよ、そうすれば地球を持ち上げてみせよう)に眩暈を覚え、消化不良の卵やトースト、株価やラインの既読、心象の明滅、免疫、点滴がノドまでくる



無人駅(1000nayuta)で降りて駅員のいない改札を抜け、(実験中)のプレートのかけられたトイレに入ると、ぼくは便器から顔を出していた

この星は星がよくみえる星だ

星は、つぎを
期待しているのだろうか

砂の時計は
いまも
タイム タブレットを
落としている


位置を持ち、部分を持たない砂粒
一粒の中で


ぼくなら有限のネクタイを軽く緩めて近くの階段をなるべくゆっくりあがっていこうとおもう




自由詩 オンザレール Copyright 末下りょう 2014-01-19 02:53:57
notebook Home 戻る