人さらい
春日線香

鏡を覗くと知らない人が映っている
引きつった頬はまるで人さらいのようだ
人さらいの口から人さらいの牙がにゅうっと伸びてきて
葡萄の彫りのある鏡を突き破りそうになる
あわてて毛布をかぶせて
奥の倉庫にしまっておくことにする
人さらいはこわい
人さらいは恐ろしいものだ
そうつぶやきつぶやき 畑に出て
土をいじったり草を抜いたりしている
時々そこでは子供やおんなの骨が見つかるのだ
収穫をひかえたトマトやきゅうりは
どんな悲鳴をあげようかとわくわくしている


自由詩 人さらい Copyright 春日線香 2014-01-18 16:57:03
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