悪夢
……とある蛙

冒頭 突然のファンファーレ

ガシャーン

砕け散った人生の姿見
その欠片の一つ一つ
舌を出した黒猫が覗き込む
にやにや笑いの黒猫が
こちらを向いてこう言った

こいつぁ凄い

どう凄いってか
欠片が全て違っている
一つ一つ全部違う
こんな奴ぁ見たことない

砕け散った人生の姿見は
みな同じ像を写してはいるが

歪んでいたり、
滲んでいたり
ぼやけていたり
奥行きがなかったり
一部のアップ
遙か彼方の米粒
白々とした夕陽
黒々とした深海

砕け散った人生の姿見からは
一言で言える真実は
何も映っていなかった

くだんの黒猫は
その破片欠片一つ一つに反吐を吐く
反吐を吐きながらこう宣う

お前の姿見もそのうち割れるだろうよ

等と言いながら
俺に薄笑いを見せるのだった。



また、また、突然のファンファーレ

今度は随分近くで鳴っている。

ドーン っと

足元にぱっくりと開いた大きな孔
覗き込んでも真っ暗で
その孔の脇で黒猫が
孔を覗き込んで呟いた

随分大きな暗黒だ
底など見えないが底が浅い
手の届く底だ
しかし、真っ暗闇で底が見えない
それがお前の結末だ

分かっていながら覗き込む
お前の心の結末だ

等と言いながら
俺に薄ら笑いを見せるのだった。



さらに大きなファンファーレ

頭上を覆う大きな黒い鳥
よく見れば
黒猫の顔をした大きな鴉

連れてってやるよ結末に

鴉は薄ら笑いを浮かべて
大きな口で俺を咥えるのだった。

そのまま暗転

同時に昔が現れる
同時に今が現れる
夥しい数の自分の過去が現れれる
そのままばらばらに現れる。

そして、意識が額にくっついて
そのまま、ばらばら、暗くなる
疎らな意識の奥底で


自由詩 悪夢 Copyright ……とある蛙 2014-01-17 14:47:54
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