夜明け
由木名緒美


生命の断崖絶壁を一息に飛び越えて
数千のむく鳥の叫ぶ警鳴のさなかうずもれる
お前たちの眠りを食べてしまいたいんだ
膝を抱えて耐えている君へは海風の接吻を

夜の最深部、平野の大動脈が鼓動を繰り返す胸の中で
寝返りをうつ赤子の頬は
自我の薄布にやさしく撫でられ
夢から覚める一時の間
それはオーロラのように夜空へと翻った

一本の髪の毛が伸びる時間
数多のアルバムが焼却されていく
未来への弔辞はそのままに
かじかむ裸の爪先を抱えて
明らむ過去へとコールする

柔らかな指先で目覚ましを止めれば
更新された君に出逢う
その時はきっと、この朝をきつく結び合えるね
「お早う、出掛ける時間だよ。」


自由詩 夜明け Copyright 由木名緒美 2014-01-16 20:03:12
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