宙を舞う
……とある蛙

死について、

突然、その時は訪れる
死の実感は
高校二年の春だった。

いつもの朝の登校時
いつもの郵便局の角を曲り
いつものとおりのバス通り
いつもの調子で渡ろうと
いつもの歩幅で渡りだす。
信号待ちの車列を確認、
いつものとおりに渡ろうと
本の数歩前に出る

っとその瞬間
車のフロントバンパーが迫ってくる
ゆっくりゆっくりと迫ってくる
それを視認し避けようと
しかし、身体は動かない
意識はあるが動かない

だが焦っているわけでも無く
意外と意識は冷静で
轢かれるなぁ 等と思いながら
死ぬのかなぁ 等とも思った。

突然、身体が宙を舞う
その瞬間はスローモーション
スットップモーション
宙を舞い
全ての音が遮断され
しかし、身体は宙を舞う
身体は勝手に宙を舞い
他人の身体で宙を舞う
思った通りには動かない

昔のことが全て同時
あるいは逐一思い出す
走馬燈はこんなものだっけ
痛くもないし
痒くもない

ってその瞬間
曇り空が視界に入り
空を見ながら呟いた

いやぁ あっけねぇなぁ

刹那
全てが現実のものとなる
ほんの二,三メートル先での
クラクションとブレーキの音が
落下した自分の身体に降り注ぐ

死ぬ瞬間は
まぁどんななのか

とつぜん身体が痛くなる
落下の時の衝撃で
やはり生きることは
痛いものだと実感する。

それからも
痛い思いをしながら生きて行く
痛い思いをたくさんしながら


自由詩 宙を舞う Copyright ……とある蛙 2014-01-15 16:25:44
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