メランコリックマンデー
中山 マキ









昨日まで屋根が崩れ落ちそうな
廃屋があった場所が
今日は空き地になっていた

祖母が住んでいた石川のあの家も
父が建てた仙台のあの家も
今は私たちではない誰かが住んでいる

移り変わりゆくものは
季節ばかりではないこと
思い出という形の中にも
忘れてしまうものもある

東京は何の所縁もない人々が
集まっていて(わたしもそこに含まれて)
しまいには大所帯になって
田舎の過疎化が進むことも頷けます

戻りたくなかった場所も戻りたい場所も
今では見る影もないほど
立派なマンションが建っているかもしれないけれど

戻りたくない場所も戻りたい場所も
お金をかけてまで行こうとするほど
執着すらないことにいつか気付くのです

ふと、わたしが今ここで何をしているのか
気になっている人はいるのかなと考えて
あの人が今どこで何をしているのかと考えて

それほど正確に
その顔を思い出せる人がいないことに
漠然とした淋しさを思わないわけではないけれど

人は一人では生きられないという偽善と
人は死を選べないという現実を両天秤にかけて
結婚したいと焦っている女友達の電話に
居留守を使うのにも慣れました

答えの出ない恋患いに時間をかける時間がないわたしは
今日も無心で卵白を、泡だて器で混ぜて
せっせとメレンゲを作り
雲のような真っ白な何かを焼いています

その時だけはまるで神様のような気持ちになって
明日はいい天気になるといいなと
そんなことだけを思うのです









自由詩 メランコリックマンデー Copyright 中山 マキ 2014-01-07 17:24:57
notebook Home 戻る  過去 未来