メモ
ichirou

半年ぶりの実家はいつも通り
父は孫と はしゃぎ
母はセカセカと 動いている

ちょっと気になる
カレンダーと
冷蔵庫に貼られたメモ用紙の枚数が

カレンダーはもう日付がわからないくらい
冷蔵庫はまるで妖怪のようだ

元旦 父からの嫌な電話
   「母さんがちょっとボケ始めている」

皆は外出 母は夕げの仕度
計画したわけではないが
風邪気味を装い母と家で2人きりになる

ーーー ごめんね 母さん ーーー

「ねえ、母さんいくつになったけ?」

ーーー 76だよ 母さん ーーー

    「76よ。」

ーーー よかった ーーー

「父さんはいくつだっけ?」

ーーー 79だよ 母さん ーーー

    「そうそう、お父さん今年サンジュウなの。」

ーーー うおああああああああああああ〜 ーーー


    「今年は私も喜寿だし、お父さんはサンジュだし。」
    
「サンジュ?」

    「サンジュ。カサのことぶきで傘寿よ。
    確か、長野の育達も春休みディズニーランドに来るって言ってたから…
    …3月19日に皆で集まらない?」

母は台所の妖怪と日付のわからないカレンダーの
メモから情報を引き出す

年相応にぼけ始めた父親と母親の努力の差の
メモたちに安心しつつ
ハンカチで涙を拭う

    「あんた!ハンカチで鼻かむんじゃないわよ!」

「えへへへ、準備手伝うよ。」

    「ダメダメ!あんた、後期高齢者に風邪感染す気!」


自由詩 メモ Copyright ichirou 2014-01-04 10:50:27
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