苺エッセンス
藤鈴呼

木目通りに 幾重にも編んだ 絹の糸

此処が 何重目で有るのか
難渋なのか 何回なのか
何階なのか 何階なのか

とにかく 分からなかったから

海へ出よう
唐突に 君は言う

勿論 行先は 北極に非ず
南海だ

もう それしか 無いのだと
言い聞かせて

一体
誰に

分からぬまま 船を漕げば
焦げた 臭いに
鼻を すくめる

一輪の 岸壁の 乙女に
恋をする 余裕なんて 無く
泣く泣く 振り返りながら
声の限りに 叫べば

遠吠えが 聴こえる

いや 幻聴だ
自らの 声だ

反響するんだ

反抗ではない
犯行なんて していない

流れた筈の 血しぶきは
苺エッセンスの 間違いだ

木目は 今も 
絶え間なく
たゆまず
進み続ける

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自由詩 苺エッセンス Copyright 藤鈴呼 2014-01-01 18:30:06
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