白い音の手紙
霜天

向かい風の吹いている
地図の上です
収縮と膨張を繰り返す波打ち際の
緩やかなカーブをなぞること
波音は届かずに
待ち焦がれるばかりの



海岸線が近い
そうで
少しずつ僕らに迫っているらしくて
宛先も海底に沈んでしまうかもしれない
波音の聞こえる
あなたの住む場所は
そこで
我家の郵便受けはいつも
寂しいばかりで

返信
あなたからの
波音が聞こえます
そちらでは僕らの
削られる音が聞こえますか
暖かな春になれば
遠く遥かの氷が溶けて
浮かび上がった砂浜を
歩くことを
焦がれます

いつか、いつか、会いましょう
短針の進む速度で
溶けたら
春の緩さを持ち寄せて



僕らは地図の上です
あなたの街に雪が降ること
なぞる指が止まって
凍えるばかり


自由詩 白い音の手紙 Copyright 霜天 2005-01-13 14:59:29
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