現実を食べる貘
ichirou
近頃めっきり夢が減ってきたので
巷の貘達は仕方なく
現実を食べるようになりました
現実を食べるようになって
貘達は急に怒りっぽくなったり
不機嫌になったり
涙ぐむようになりました
それでも食べる夢がないので
貘達は仕方なく現実を食べ続けました
そんな日々が続き
貘達は
昔が恋しくなり
懐かしい
おいしい夢の味を
思い出すようになりました
そうしているうちに
貘達は現実を食べると
いろいろな過去を
思い出すようになりました
いつも夢のある未来を見続けていた貘達は
過去というものがとても新鮮に思えました
現実を食べ
過去を思い出す
貘達は
不思議なことに
いつの頃からか
自分で夢を見るようになりました
貘達に現実を食べられてしまうようになった
人々は
現実のしがらみから
少しずつ解放されるようになっていきました
そして
いつの間にか
物事を前向きに考えるようになりました
物事を前向きに考えるようになった人々は
現実に対しても前向きに
考えられるようになりました
そして
以前のように
たくさん夢を見るようになりました
貘達は
自分達の食べる夢が増えてきても
懐かしい現実を
たまに食べていました
自分たちの夢を見るために
そんなとき
人々は
少しだけ
現実のしがらみから
解放されるようになりました