サンタクロース実在証明
紀ノ川つかさ

サンタクロースはどこに子供がいて
何を欲しがっているかが分かるし
トナカイのそりに乗って空を飛んだりできるのだから
一種の超能力者と言える
昔からそうしてクリスマスの夜に
プレゼントを配り歩いていたのだが
最近になって三つ大きな問題が出てきてしまったのだ

第一の問題
子供が増えてお金が足りなくなってしまった
プレゼントはただではないのだ
例えばある会社が千円で売っているおもちゃを
五百人の子供が欲しがっていたとする
サンタがやってきて
「そのおもちゃを子供に配ってあげるので五百個下さい」
といっても会社としては千かける五百の
五十万円もらわないとおもちゃを渡すわけにはいかない
ただで渡してしまったらその会社にお金が入らなくて
その会社で働いている人が困ってしまうんだ
それにサンタだってそんなにお金は持ってない
とても困ってしまった

第二の問題
子供が増えて一晩で配れなくなった
フィンランドだけ配っていればまだ間に合ったが
今や世界中の子供達がプレゼントを待っている
子供がいる家はとても多くて一人では
とても一軒一軒しかも一晩で配って回れなくなった
一人で配っていると夜が明けてしまう
サンタの人数を増やしたかったが
子供の心が分かって空も飛べる超能力者って
めったにいないんだ
さらに持ち運ぶプレゼントの数も多くなったので
自分の持っているたくさんのプレゼントの中から
その子に渡すプレゼントを選び出すのに
とても時間がかかるようになってしまった
全体の数を減らすために
ちゃんとサンタを信じてくれるいい子だけに配る
というような条件を付けたんだけど
とても一晩じゃ回りきれないことは変わりない
これはまたとても困った問題だ

第三の問題
最近の家には簡単には入れなくなった
煙突のある家が少なくなったし
あとマンションに住んでいる子供も多い
それにだいたいどこの家も泥棒が入らないように
夜中にはしっかり鍵をかけているんだ
煙突が無くなったから
夜中にピンポンを押して親に起きてきて
プレゼントを渡すという方法もあるが
親がぐっすり眠っていて起きてこないこともある
これも困った問題だ
  
サンタはこの三つの問題について考えた

第一のお金の問題を解決するために
たくさんの人からお金を寄付してもらおうと思った
でも人はそう簡単に寄付してくれない
どこかの知らない子供のプレゼントのために寄付するくらいなら
もっと貧しい子供や食べる物がない子供に
寄付した方がいいと考える人がほとんどだからね
そこでサンタは思いついた
確実に寄付してくれるのは
親が自分の子供のために
自分の子供の分のお金を寄付してもらうことだ
例えば太郎君がクリスマスに千円のおもちゃを欲しがっていたら
太郎君のパパやママは千円は確実に寄付してもらえるはずだ
そうして寄付してもらったお金で太郎君のためのプレゼントを買えばいい
いや待てよ
どうせ買うのならお金ではなく
太郎君のパパとママに太郎君用のプレゼントを買ってもらって
それを寄付してもらった方が簡単ではないか
そうすればサンタはあとで太郎君に配るだけでいいのだ

第二の配って歩回る時間の問題について
サンタは考えた
一人じゃ配りきれないし
サンタも簡単には増やせない
でもとにかくサンタでなくてもいいから
代わりに配る人を頼もう
第一の問題を解決するために
太郎君用のプレゼントを買ったパパとママから
そのプレゼントをサンタに代わって配る人に渡してもらおう
誰がいいだろう
太郎君をよく知っていて太郎君の近くに住んでいる人がいい
そうすれば配るのも楽だからね
そしてサンタはごく簡単なことに気がついた
要するに太郎君のパパとママに
太郎くんの分のプレゼントを配ってもらえばいいのだ
そうすればなんと
第三の家には入れないという問題も解決するではないか
なぜなら太郎君のパパとママは
太郎君と一緒に住んでいるからね

従って次のようになる
サンタは自分に代わって
パパとママに子供のプレゼントを買ってもらって
夜中に子供に配るように形を変えたのだ
つまり要するにだな
パパは嘘をついていたわけじゃないんだぞ



自由詩 サンタクロース実在証明 Copyright 紀ノ川つかさ 2013-12-25 00:00:49
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