キウイフルーツ哀歌
イナエ

夜店の風鈴のように
蔓棚から垂れて枝にぶら下がり
秋風に吹かれている卵
茶色く毛羽立った上着の中は
半透明なグリーンの輝き

物珍しさと
手間の掛からない栽培が
流行を呼び 
夏は陽よけの程よい棚
冬は甘酸っぱい味わいが
グルメな人の賞味を得て
健康食品に仲間入りもしたけれど

スーパーの安価な袋売りに追われて
栽培の流行も終わり
次第に痩せていく果実
手間を省けば
気ままな野生に戻るは道理

徒長枝は身の程わきまえず
衝天を試みて
五月の風にへし折られ
脇芽は夏が過ぎても
野放図に伸びて棚にからまり

垂れ下がった枝は
無造作に引きちぎられて
ささくれた傷口
冬の薄い陽に舐められ
風に震えている


自由詩 キウイフルーツ哀歌 Copyright イナエ 2013-12-24 15:10:39
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