キウイフルーツ哀歌
イナエ
夜店の風鈴のように
蔓棚から垂れて枝にぶら下がり
秋風に吹かれている卵
茶色く毛羽立った上着の中は
半透明なグリーンの輝き
物珍しさと
手間の掛からない栽培が
流行を呼び
夏は陽よけの程よい棚
冬は甘酸っぱい味わいが
グルメな人の賞味を得て
健康食品に仲間入りもしたけれど
スーパーの安価な袋売りに追われて
栽培の流行も終わり
次第に痩せていく果実
手間を省けば
気ままな野生に戻るは道理
徒長枝は身の程わきまえず
衝天を試みて
五月の風にへし折られ
脇芽は夏が過ぎても
野放図に伸びて棚にからまり
垂れ下がった枝は
無造作に引きちぎられて
ささくれた傷口
冬の薄い陽に舐められ
風に震えている