take a birth
Neutral

原始の地球で生命が誕生するかのように
うなりをあげ ドボドボと音を立ててそれは始まった
新しく生まれる世界の器が満ち足りるのが待ちきれず
私はひざまずき成り行きを見守る

器の底はあっという間に満ちた
だがどうしたものか 水位はなかなか上がらず
私は不安に駆られる
私の力が足りないからなのだという気にすらさせられる
ここから器が満たされる未来がまるで想像できない

ふと振り向くと
大渦を起こす箱舟が狼煙を上げている
これは世界創生だ
だから ここ一か所だけに気を取られてはいけない
ああ 向かわなければ

世界の穢れから逃げ出そうとした密航者たちの箱舟から
沈没者を救い上げ 再び光の下に引きずり出した
とかく彼らはこれで良い
私は再び器の元へと戻る
ものの数十分目を離しただけだった
そこにあるのはエントロピーの崩壊 新世界がさあ大変
噴火だ いや大洪水だ
早く蛇口を止めましょう

風呂桶という名の器は満たされ
これが今晩一夜限りの 私の癒しの世界
バスタイム 世界の穢れからの逃げ道
入浴剤で真っ白にした水面は箱庭のよう
まるで創世神話のように
お風呂のおもちゃを浮かべては世界に想いを馳せる

タオル巻き 香りとつやりこの心 明日の新たを包む布の柔

ぬるくなった白い湯は
私の垢や汗とともにホースで汲み上げられていずこへと向かう
全機能を停止し眠りにつく箱舟に
昨日夢に見た新世界を抱えて今日も密航者たちは乗り込んでいく
大渦を起こす四角柱のそれは
安さだけが取り柄の全自動洗濯機だった


自由詩 take a birth Copyright Neutral 2013-12-24 01:10:45
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