ミルキーブルーのVanity
草野大悟2
饒舌な静寂が夜を駆け抜けるとき
一億人の思考を吹き飛ばしたAは
3Dコピーで一億人のAを創り
闘うべき赤鬼はもう
きび団子の英雄には倒すことはできない
雉も猿も犬もみんな置換されてAになっている
まるで
30分で、一気に大人になったみたいだったよ
疑問符そのもののような顔をして
檸檬がつぶやく
エイヤバ・オバビ
エイヤバ・オバビ
働くなかれ
洗濯船のなかの僕たちよ
働くなかれ
突然 目の焦点を断ち切られたように視界が曖昧になり
青空の穴からこぼれてくる希望がいびつな形になった
野蛮人の意味を調べて希望は愕然と空を見上げた
彩雲が幸せを嘘のように約束していた
僕らの希望は まだ 生きている
溶けてくるのは腰?
いや、そうではあるまい
それは、キャベツであったはずだ
あるいは、おまえ そのものであったか?
蜜柑の骨が、おそらくは蝶になるのだ
蝶の飛ぶ空だけは残しておいて欲しい
願っているのは?だけではない
多くの風が吹いているのだ
茜色のときが いきなり消えて
雨傘は 紫陽花をさがし
心は心を抱きしめる
よじれる鉛筆が十六夜を犯し
十六夜は十三人のユダを産む
十六夜は処女であったころの風をまとい
眠りこけている永遠の頭をひっぱたく
美尻は 毎日 今日を産み続け
何億もの子をなしたけれど
おれの今日は明日だ、と
もちろん分かっている
でも、今日がそれはおかしい、と異論をはさむので悩んでいるのだ
今日と、おれと、明日とは
おそらく
うまく競合してゆく幻かもしれない
あのころの輝きという物語を物語る空から
無数の秘密が投下され爆裂する
空だ
ミルキーブルーのVanityだ
風通りの旗は
はたはたとはためく時を待って
いま、この国の地底深くじっと希望のように眠っている