水時計
クナリ


孤独になりそうな気配の休日
無機物相手なら落ち込むような目にあうこともあるまいと
一番のお気に入りのマグを揚揚と取り出したら
見事に縦に一本ひびが入っている

見つけたのが夜でなくてよかった
光に満たされた世界でなければ
端的に
救いようがなくなる光景だから
昼間であればこんなものは
日常の振りができる程度の悲劇

マグに水をいっぱいに入れて黒い木のテーブルに置く
大丈夫かなと思ってみていると
染み出した雫が集まり集まり
とどめようもなく とどめようもなく
とうとう線になってマグを下り
テーブルに着いてぽつりと止まる
見ない振りができる程度の
雫の一つ一つ
でももう
こぼれ落ちるばかりの
水がめが枯れるまで
こぼれ落ちるばかりの
雫の一つ一つ

日常の振りができる程度の悲劇が
すべて流れ落ちてしまえば
床の上には
迷惑でしかない水溜り
テーブルの上には
ただの壊れ物が残るだけ
ああ そうだったね
ああ そうだった

どうしてくれる 無機物

流れる流れる
こぼれるこぼれる
落ちる落ちる
まるで砂時計のようだけど
まったく違う

もう元には戻せない

いちかばちかでひっくり返したら
すべて 水の泡。



自由詩 水時計 Copyright クナリ 2013-12-15 19:25:48
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