気付かなかった事
yamadahifumi

生きる事と死ぬ事の間に広がる世界

そんな世界で僕は今日も

言葉という肉体を抱いて生きている

現実においての僕は死ーーーそして、あの世の僕もやはり死ーーー

生という名の死と死という名の死と、

二つの死の間に挟まれて身動き取れず

ふだんの僕はいつも窒息死している

想像する事は常に体験より素晴らしいーーー

それはもちろんだ 結局、人間に備わった唯一の器官は

夢見る事しかないのだから

僕は君たちが造り上げたこの現実という

最低の出来の夢に手を振って別れを告げる

・・・フッ、シェイクスピアだってもう少し上手く夢を見たさ

あれから何百年も経って、僕達の見る夢はいまだに拙劣だ

映画館に行きたまえテレビをつけたまえネットの放送を見たまえ

そこにどんな拙劣な夢があるのか

そして、君のーーーいや、僕達の人生こそは

この世での最も愚鈍な夢だ

生きる事を礼賛するのをやめる時

僕達は静かに棺に横たわって夢を見る死者の群れのように

その時、始めて流星の美しさが分かる事になる

もうとうに世界は終わっていたのだ 問題はただ

僕達がそれに気付かなかっただけなのだ、という事を


自由詩 気付かなかった事 Copyright yamadahifumi 2013-12-15 14:00:27
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