異状であっても病気じゃない
イナエ
土曜日の朝
詩の学習会に出かける電車の中
文庫を読んでいたが 文字がぼやけて読みにくい
片目を閉じてあたりをながめ 見付けた左目の異状
会場で雑談中に報告すると
詩友はきつく念を押す
「必ず 専門医に診せること 悪い病気だと大変だから」
かかりつけの眼科は午後休診
あちこち探して 専門病院を見付け診察を受ける
受付看護師「どうしました」
私 「左目の視野の中心部分が見えないようです」
その後様々な検査が続く
視力・眼圧・視野検査・眼底検査…
あっちの検査室に行ったり こっちへ入ったり
そして 診察室へ
先生「考えられるところは全て調べましたが
どこにも病気はありません」
私 「でも見えないのですけど 」
先生「歳をとって汚れてきたのです 慣れることですね
右目はよく見えるので、見えない部分は補充してくれるでしょ 」
私 (つめたいなあ)とは口に出さず
「年を取るといろいろと汚れのですね
口の中が汚れたり 血管が汚れたり 下着がよごれたり」
汚れは取ってもらえないのですか」
先生「医者は病気を治すのです」
私 「じゃ。このままで 直らないのですか」
先生「病気じゃないのですから 直せません
一生付き合ってください」
私 「一生?死ぬまで?
まあ 先は短いからですから我慢しますが」
先生は冷たく言う
「念のために 一週間後に来てください 」
私は悟るのだ
年を取ると異状も正常になると