獅子岩
イナエ
七里御浜の白砂の端の
岩場から顔を上げ
碧い海の彼方の故郷に
吠え続けたいく春秋
下半身は岩に同化した
春
桜吹雪に包まれて
華やぐ心に
霞みに消える空を
呼び止め 呼び戻し
秋
海を渡る風に
遠い南の木々の香りを
たてがみに濡らし
人には聞こえない声で
遠くへ吠え
頭上を越える鉄の鳥も
海を遠ざかる白い船も
吠え声に耳を閉じ
吠える姿に目を背け
去っていった
獅子岩は今日も吠える
波頭はるかな故郷に
青い平原は
今もあるのか
獅子岩=三重県熊野市の海岸
自由詩
獅子岩
Copyright
イナエ
2013-12-10 15:28:01
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