キングダム・ブレイク[或いは]巡る吟遊詩人
ゴースト(無月野青馬)

紫の瞳を隠し持つ男が
現れるという噂が
流れていたから町では
誰も彼も
目線を合わさなくなり
サングラス・マンがありふれた


紫の瞳にやられると
突発的に自殺をしてしまうらしい
何の仕組みか解らないが
自我が保てなくなるらしい


町には
ポリス・マンが
警告灯で警戒している
夜型のヒトガタばかりが
被害に遭っていた


町一番の名探偵が
犯人逮捕に乗り出した
町中のヒトガタ1人1人の
夜間の行動を取り調べた
電磁記録を調べても
怪しいヒトガタは1人もいなかった


ヒトガタの犯行でなければ
マモノの犯行としか考えられなくなり
町一番の名探偵は
マモノの出現を待ち続けた


「世界」は今
魔女とマモノの脅威にさらされていた
「世界」中の名探偵も
魔女とマモノに対抗していた
マッシュポテトになってやるものか!と


名探偵に与えられた使命は
マモノの親玉を暴くこと
ヒトガタに擬態している
紫の瞳のマモノを暴くこと


名探偵は
マモノの巣を探す
酒場を探る
カジノも床屋も探る


マモノの親玉
紫の瞳の男は
名探偵を苦々しく思い始め
「世界」が均される前に
名探偵をマッシュしようと思い
名探偵包囲網を布いた


名探偵は
ヒトガタ長老に
オーブを借りた
この宝玉の防御がある限り
マモノはヒトガタには触れられない、マモノを無力化出来るという触れ込みだった
名探偵は守りを固めて
調査を続ける


名探偵は調査を続けた
身の危険は無いのだポリス・マン達も探偵自身も錯覚していた
錯覚していた
錯覚したまま
1週間後
名探偵は
サイコロステーキのようになり発見された
オーブは粉々になっていた
加護が無かったのかもしれなかった
ヒトガタ長老は
姿をくらませた
約600年間に渡り
町のヒトガタ達の指針だった
長老の家系はこの時雲散霧消した
長老の
裏切りによって
名探偵は冥土へと行ったのか
真相の究明は誰に出来るのか
町のヒトガタ達は
名探偵の死を
受け入れられたのか
今は分からない
永遠に分からないままなのかもしれない
このまま
時の経過だけがあって
砂時計の虚しさがあって
マモノは紛れたままで
ヒトガタ達は鬱屈するだけなのか


遺伝子はどうか
ヒトガタの名探偵の遺伝子はどうなっていくのか
花粉のように
どこかに辿り着くのか
どこかに辿り憑くのか
誰かが観測しているか
平行世界のガリレオのように
誰かが説明するか
平行世界のガリレオのように
誰か命を懸けるか


自分達の可能性
自分達の広がりを、火を
ヒトガタ達が得る日を
ヒトガタ達が得る火を
魔女とマモノ達は恐れているのだ
事象を見聞したなら
吟遊詩人よ唄え
吟遊詩人よ唄え
別の可能性があることを
別の「世界」があることを
唄うのだ
吟遊詩人よ
巡る吟遊詩人よ






自由詩 キングダム・ブレイク[或いは]巡る吟遊詩人 Copyright ゴースト(無月野青馬) 2013-12-08 19:40:42
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