ウスユキソウ
中山 マキ







なるべく
わざとらしくないように
コートの襟を整えながら

誰でもないきみを待っていて
少しだけ小走りで
誰でもないぼくに駆け寄って来る

帰り道をひとりじめ
隣を歩く
右目の端にきみがいる

この例えようのない
甘酸っぱさを
ぼくは毎週月曜日にだけ手に入れる

人を好きになる構図は
複雑に見せかけて
じつはとても単純

コップに注がれる水のように
溢れてはこぼれ
こぼれては溢れる

おそらくこのまま
ぼくときみは
これ以上でもこれ以下でもない
関係のままなのだろうけれど

あえて会わないという選択肢はないので
ただぼくはきみを
このまま好きになって
このままずっと好きになって
行くだけなんだと思う

まるでウスユキソウの花言葉のようで
悲しくないといえば
それは嘘だけれど









自由詩 ウスユキソウ Copyright 中山 マキ 2013-12-07 20:30:39
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