すき
消しゴム


 君はまだおんなのこだから・・・

 帰り道 
 ぽってりふくれたくちびるに
 まっかにそまったほっぺたに
 冷たい流れに逆らいながら
 煌々と光るネオンの海を二輪車で泳いでく。

 3色の満月が青く点滅して赤くなる
 君は泳ぐのを止めて、止まり、
 時折、空を仰ぐと、

 悲しそうな目を、する。

 思い出したように、ぽってりふくれたくちびるに
 薬用の白い紅をひき、くちびるを合わせる。

 その姿が、愛しくて、儚くて。

 また君は泳ぎ始める。
 そうやって、君は前に進んでいき、
 どんどん赤く、熟れていく。

 『君はまだおんなのこだから・・・』

 なんて言ってるうちに、僕は君の姿に触れられぬようになって
 君はいつのまにか、おんなのこではなくなって。

 君は泳ぐ。暗い海も、真っ白な海も。
 そうやって、君は前に進んでいき、
 どんどん赤く、熟れていき、


 ――そして僕を、忘れるんだ。

 僕が君を忘れる前に。
 君が僕を、忘れる前に。

 たったひとつの、言の葉を。 


自由詩 すき Copyright 消しゴム 2005-01-11 22:37:04
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