日記買う
八布

ある冬晴れの日のその空と
同じ色の表紙をした
日記を買った
他に種類はたくさんあったのだが
それはひときわ僕の目を惹いて
一度手に取り
一度戻して
もう一度手に取り買ったのだった


かばんに日記の重みが加わると
書きたいことが次から次へと
わき出してきて止まらなかった
冬晴れの日の街なみに
いくつもの物語が見え隠れした
この世の営みのすべてを
言葉に変えてしまいたいと思うことは
もしかしてとても
野蛮なことではないだろうか?
そんな気もするけれど
過ぎ去っていく大きな流れに
少しでも傷をつけたくて
歌で言葉でストーリーで
人は自分の夢を残していく


家に帰って
新しい日記を開いてみると
罫線の道がまっすぐに伸びていた
僕は
まっしろな頁の地平を
どこまでも歩いていく
自分の姿を見たような気がした




自由詩 日記買う Copyright 八布 2013-11-27 09:37:20
notebook Home 戻る