柘榴の実ー高村光太郎展にてー
服部 剛
硝子ケースの中にある、
木彫
(
もくちょう
)
の
酸っぱく熟れた
柘榴
(
ざくろ
)
から
赤い粒等は顔を出し
薫りは鼻腔に吸いこまれ
僕はひと時、酔い痴れる――
美術館で立ち尽くす
旅人の僕に(体の無い誰か)が
耳元で
ふいに一言、囁いた
――生は
齧
(
かじ
)
るほど、味が出る
振り返った背後には
誰もいなかった
自由詩
柘榴の実ー高村光太郎展にてー
Copyright
服部 剛
2013-11-23 19:51:18
縦