バベルの塔の頂上で
yamadahifumi




僕もまた人並みに幸福になりたいのだが

僕の中の宿命がそれを許さないのだ

僕は幸福が恐ろしい

幸福になる事はいつも、次の瞬間にやってくる

深淵への落下を予測させる

だから、僕には不幸こそが似つかわしい

不幸は安心する 孤独でいると

人と離れ離れになる心配がない 他人の信頼を得続けるために

努力したり演技したりしなくて良いと思える

だが、しかし、今、この僕の書いたものを読んでいる『君』とは何か

それは僕の為に作られた一つの偶像ではないのか

僕はいつの間にか、自分に都合の良い君を創造してしまったというのか

僕の語る全ての言葉のあらゆる感情に

仔細にうなずいてくれるそのような魂を

そして、その時、ようやく、僕は孤独から解放されるというのか?

・・・今、僕が気が違っている事を確信する時

実に僕の心は穏やかで満ち足りている

まるで世界がバグってぶっ壊れたかのようだ

そして、ゆったりと月は落ちてくる

あれはコロニー落としの夜・・・そう、君が生まれた晩だ

だが、いつか君の正気は僕の狂気を

理解するはめになるだろう

何故って、君も一人の人間だから

だから、君もまたあの人間達が造り上げたバベルの塔を

再び、登りきらなければならないだろう

そして、その頂上では僕の狂気が君を待っている

君が血を吐きそうな微笑を見せて

僕に握手を求めるその日を




自由詩 バベルの塔の頂上で Copyright yamadahifumi 2013-11-21 08:55:03
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