ゲッチョバリウス
花形新次

薄暗い回廊を
ゲッチョバリウスの
音色を頼りに歩いていたとき
テペンモーケンの影が
目の前をゆっくりと通り過ぎた
その懐かしいスリモナを見たくて
走って追い付こうとするが
スリモナは影よりもずっと速く
見失ってしまう

ゲッチョバリウスは
低く悲しいソバルーティに変わっていた
「マンダルジィィッ!」
僕は思わず叫んだ
これを逃したら最後
もう二度とナカヤラーナには
会えない気がした

回廊の壁に飾られた
シュピルマンのサバグラフに描かれた
テペンモーケンと
その愛しいスリモナ
すべてはゲッチョバリウスが奏でた
幻想のセメターボだったのかもしれない

ナカヤラーナ
僕のナカヤラーナ

きみはやはり
ドペンチョモスの丘で
自らをポアネーゼしてしまったのか
サマターをワイヤルパイヤルに委ねてしまったのか
だから僕の前に
タマナメヤールを晒すことが出来ないのか?

いいや、それでもいい
それでもいいんだ、ナカヤラーナ
きみのタマナメヤールは見なくてもいい
もう一度聞かせて欲しいんだけなんだ
きみの本当のブリンジンブルルを
きみのカラメテーデドプチンを
きみのセレバンターゼゴバンコーレを!

ナカヤラーナ
聞こえるか
僕のナカヤラーナ





自由詩 ゲッチョバリウス Copyright 花形新次 2013-11-18 22:11:41
notebook Home