家庭内踏切
清水らくは

リビングの屋根を切り裂く遮断機
僕らの悲しみが通るたびに
赤く光るランプと
天へと突きぬける音で
踏切は交流を断っていた

君がいなくなってからも遮断機は下りる
踏切は二人の距離を知らない
僕ひとりの部屋で繰り返される
光って鳴って下りて上がって
静かになって
君との間にはまだ列車が走っているのだ

僕の部屋に新しい人が来て
その彼女も踏切に足止めされて
気にしないとか我慢するとか
やさしさは猶予をもたらすけれど
でもやっぱりうまくいかなくて
結局一人で光るランプを眺める

ああ君は
大切だった
不思議なくらい
大切だった

三日間遮断機が下りなかった
君は悲しまなくなったのか
それとも君でなくなったのか
思い出に鍵をかける準備をした頃
赤い光が点滅し始めた
切り裂け
何度でも切り裂け


自由詩 家庭内踏切 Copyright 清水らくは 2013-11-11 22:12:31
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