ヘンゼルとグレーテルとまともさん
因子

ものを書き捨てて行く
爪やヒフや肉などを
少しずつ来た道に落としていく
いつか元いた場所に
帰り着きたいと思っている
それがどこかもう忘れてしまったけれど
わかってる
母のおなかの中だ

私の行く先に
「まともさん」がいる
きっと永遠にたどり着けず
私はその居場所を
いろんな人に尋ねながら
「まともさん」のことを
ひとつも説明できずに

お酒を飲んで酔っ払い
「まともさん」の物まねをし
悲しくなって泣き出すと
みんな似てたよと言いながら
ニコニコ私を慰めてくれる

「まともさん」はどこかにいる
私が東にいれば西に
西にいれば東にいる

地にいれば天にいる

通勤中のサラリーマンの
鞄の上や肩にいる

明日隣の席にいる

私だけがたどり着けない。


自由詩 ヘンゼルとグレーテルとまともさん Copyright 因子 2013-11-10 19:13:55
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