アクトロイドの愛
イナエ

   
たたかれても 怖がられても
一日中笑顔で過ごす 
他には表情が無いから

人間と同じ姿に作られて
どこで間違ったか
喜怒哀楽が有るように錯覚されて

人と遊びたいとも思わないが
遊び相手になる子どもには
誠意をもって愛を伝えているつもり
たとえ仮想の愛であっても
そのことは嘘ではないのだから
子どもも楽しく遊んでくれればいいのに
人間の命を持っていないことを見抜いて 
恐がり 泣く子はかわいくないね
幽霊かキョンシーに見えるらしいけれど
悪さすることはないのだから
泣くことたあないと思うのだが

男たちのほうが可愛いよ
おっぱいに触りたそうにじろじろ眺めて
どんなに愛されても子どもなど出来ない身体
さわった男には愛情一杯応えてやるのに

人間の愛はやっかいなこと
相手を独り占めしたいものらしくて
生殖器を持った人間の愛のような 
贅沢な哀しみを私たちは知らないけれど
嫉妬もなく分け隔て無く愛せるのだから 
私の愛は理想だろうね

それでも 真夜中
アクトロイドだけにはしないでほしい
昼間 人間に愛と笑顔で付き合って
ほてった肌を冷やしたいのだから

気まぐれな人間の並べ方で
女のコピーが闇に投げる冷たい愛のほほえみ
視線が合うのは切ないな

しゃべり合うことなどできないうえに
眼を閉じることもできないし 
息が詰まるよ(呼吸なんぞしていないけれど)
互いに思考を反らして
熱が出るのを防いでいるけれど
何時発火するか知れないほど緊張するから

呼吸がない空間にいて 死ぬことも出来ないで
それでも記憶は永遠だから
遊んでくれた少女の声も 
少年のまなざしも 男の好奇心も
記号の貯蔵庫に封じ込こんで
言葉も 笑顔も 過去も 現在も
わたしの中で生き続けて行く

忘却を知らないというのも
かなしいことだ

         ※ 過去作「アクトロイドの恋」改稿


自由詩 アクトロイドの愛 Copyright イナエ 2013-11-08 18:46:43
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