ひとりぼっち
ヒヤシンス


海を見ていた。
赤い靴を履いた仏蘭西人形は何処へ行ってしまったのだろう。
微かに横浜の匂いのするあの応接間に
何か大事なものを落としてきてしまったような気がする。

それは心?愛?
自分の成長に気付かずに大人になってしまった少年は、
純粋な瞳に恋焦がれる。
好奇な視線と人々の談笑。全ては音のないモノクロームの世界。

話し相手のいない私は、一人海を見ている。
私を愛してくれた祖父と祖母の命日を刻んだ万年筆。
ツバメのノートに書き記した一篇の詩。

ごめんね・・・。
それでも悲しみを超えた愛を私は信じる。
行き交う船の汽笛が虚空に浮かぶ。


自由詩 ひとりぼっち Copyright ヒヤシンス 2013-11-07 21:23:35
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