夜更け
月形半分子

タバコの煙りでかすむジャズ・バーで

憧れを飴玉のように口に含んでは

恋人達のようにキスをしたがる

少年たちの夜更け

青林檎味がお好きなのねと

薄墨色にふけるドレスをまとった

シンガーが笑う

ピアニストは、ただ、瞳を閉じて

朝の鐘の音が入り込まないように

鍵盤をシェイクしつづけては

月光のようにジンのなかにひとり溶けていく


いつの間にか、少年たちは店のすみで

飴玉に飽きた物欲しげな互いの唇で

睫毛を濡らしては歌を口ずさんでいた


レコードのように、時が止まり木で

ホロホロと酔いつぶれているから

扉は朝を忘れて夢心地のまま




自由詩 夜更け Copyright 月形半分子 2013-11-01 00:09:28
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