水色のピアノ
草野春心
水色のピアノを
あなたは弾いていた
獰猛なまでに素早く指をすべらせ けれども
唇の端にはささやかな笑みをあつめて
手に負えない巨きさと
理不尽な複雑さをもった
真鍮製の構造物の内側には
三日月のように意地悪な
緩められた一本の螺子
……あなたは
ときに、顔を上げて
額に皺を寄せ 訝るふりをするけれど
あなたの指は駆けることをやめない
あなたの唇から笑みが消えることはない
譜面をぬいで踊りはじめる歌
夜の部屋を透明に飾ってゆく光
いつまでも
終わることはない
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春心恋歌