キス (潔しとしない)
hiroto22

お風呂に入り、
湯ぶねで一日のことや、たあいもないことを考えていると、
いつの間にかうつらうつらしていた。
と、突然ハッとして目を開けた。
お風呂の蓋に唇が触れて、ドキッとして目が覚めたのだ。
目が覚める一瞬、ほんの僅かだけれど、何かを思い出すように
一瞬ときめいた気がした。

長いこと、そういうことには縁はなく、これから先もときめきなどとは縁がないであろうと、かなりの確率で自信はある。のに、

諦めていた筈だった。
歳を取ることを、
おばさんになることを、
潔しと決めていた筈だった。

なのに、

お風呂の蓋にときめく女がそこにいた。



自由詩 キス (潔しとしない) Copyright hiroto22 2013-10-26 19:39:22
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