詩を書く事
yamadahifumi
もう何も書く事はない
もう何も伝える事はない
ただ、僕は一つの沈黙としてそこに存在しているだけ
そう考えて、僕はキーボードに触れなくなった
・・・にも関わらず、僕の中の言葉は一つの表現を求めて
僕の中から外に出ようとする
すると、僕はその圧力に耐えかねて
再びまたこうして、キーボードに手を添える・・・
ああ、もし詩が金儲けの為の道具ならどんなに楽だったろう?
もし、人が自分自身の宿命から逃れて
金と物と肉欲のこの世界に溶け込む事ができれば、どんなに楽だろう?
あらゆる複雑な哲学、物、思想を退けて、実に平板なこの世界の掟そのものと化して
そうして、毎日明朗な自己として目覚める事ができたら、どんなに楽だろうか?
ああ、僕は僕を失いたい・・・僕にとって僕は最大の重荷だ!・・・
なのに、今、こうして僕がまた何かを書いているという事は
他人にとって何でもなくとも、自分にとってやはり何かなのだという事だ
そして、自分にとって何かだという事はこの世界にとってもやはり何かなのだという事だ
世界がどんなにはしゃいでいても、それが宿命を忘れていれば
それは神の小指が紡ぎだした塵一つの価値もない・・・
だからこそ、僕は生きている事に意味を見出そうとするし
それによって懐疑論に至り、そしてカオスの海に溺死する・・・
ああ、朝日がもし暗ければ、夜の深さを永遠に味わわなくて済むのに!・・・
にも関わらずこうして僕はまた日曜の朝に
ノートパソコンを開いて、言葉を紡ぎだす
それに何の意味もない事を知っているのに
・・・だから、僕にはもう何も書く事はない
書く事がなくなった地点から書くという行為を除いては