みたび めぐる
木立 悟
雷光と虹
透る曇
さらに高みの色を降らす
雪の無い
凍える径
銀と緑の
さかいめと折りめ
銀にも緑にも
照りかえす夕べ
四角く白い陽がわたり
角は廻り 風を運び
光は色を散らしてゆく
何も無い場所へ 散らしゆく
一度のめぐり
二度のめぐり
泣く子を照らす
曇の明かり
朝は幾度も裏返り
街はずれにだけ積もりゆく
緑の翳り 冬の笛
綿ごみのなかの 数億のいのち
水は鳴り
壁は響く
多くの頁
目覚めたものがたどる路
剥離の空
手を振る夕べ
陽から陽へと打ち寄せる冬
手のひらのなかの ひとつの歯ぎしり
籠の夜が来て
じっとしている
人を捨てたはずの人が
故郷を視て泣いている
白くなびくコロナの花
向こう岸の見えない川の冬
半分は午後
半分は風
霧をたたみ
光を吸い込む
夜の川の影
問い達の羽
曇の端を引き
視線は破ける
金と緑の袋の双子
長いあいだ会えない双子
空へ還りつづける吹雪
背を見ない午後の径
川に溶ける音の横
蛇口から蛇口へわたる蜘蛛
白と黒しかない日のふるえ
誰も泣いてはいないのに
冬の真昼の硝子玉
誰も映ってはいないのに
影の檻のはざまとはざま
鳥は飛び越え 振り返る
巡るだけの火を
振り返る
ひとつ目の雨
石の路めくるまばたきの
大きな大きな合い間をぬって
蝶は壁から壁へとすぎる
花が咲き
ほんのひととき呼吸を奪い
空に常に垂直な虹
戯れと
戯れでないものを指し示す