朝日
月形半分子

真夜中に歩いているんだ
電灯に近づくと急に影が生えるよ
影は僕の色をして
濃くなったり、大きくなったり
そしてぐるりと僕を一回り
でも、もう遊ぶ時間じゃないから
バイバイ バイバイ 色の足りない悲しい道化
そんなに斜めに傾ぐなよ
お月様が家まで付き添ってくれるから
大人になってもそれだけは、変わらないから
(次ぎから次ぎへと夜に割れていく柘榴。道が映すものは空じゃなかった)


10月だというのに驚くほど暑い一日
乱射、反射する陽光が葉裏の隅々にまで至り
ヤマモモの木に潜んでいた空蝉が
皆あらわになってしまった
そんな風景を、そんな空を、蟹は知らない
水底から水底を仰ぎ見ては思うのだ
水底ほど美しいものはないと
どこまでも、どこまでも続く一本の道に
何千何億の砂が色づいて
どんなに水が濁っても
変わらずに濡れているのだから
すべてが すべてが
(けれど僕は、濡れているから悲しいのだ)


朝日が最初に照らすのは君の窓、僕の窓
夢との違いがつかないほど
賑やかな色がみんなの瞼に生まれては騒ぎだす ランチキチキ
それが恋だった時もあれば
憎しみだった時もあるね
おはよう おはよう カラフルな道化の皆様
僕は狂った靴下にキスをしよう
カラフルが美しいとは限らない真実を愛するために
そして僕はコート色をして言おう
(みんなが大好きなあのネズミ色で)
世界をきっと愛しているよ と





自由詩 朝日 Copyright 月形半分子 2013-10-25 01:00:16
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