潮騒の丘
嘉野千尋
丘が燃える
潮騒の果てで
ラムネ壜の中の気泡が何処から生まれ
そして何処へ消えるのかを知っているだろうか
耳を澄ませば聴こえるだろう
遠い海の物語が
そう
ここから遥か西の大洋を巡って
今頃雲が北上しているだろう
明日は雨だ
そしてそれでも変わらずに
海は冷たいまでに蒼いだろう
見えるだろう
その緑のガラス壜を通して
広がるばかりの海原が
何も癒さぬ何も救えぬ
溢れるばかりの命の故郷が
夕陽は変わらずにあの水平線を今日も焦がし
そしてその向こうでは
炎が赤々と燃え続けているだろう
その糧を峻別しながら
この海は救わない
ここから生まれるものはここへ還る
弾けて消えるものに悲しんではならない
ほら見えるだろう
潮騒の果てに 今日も燃えるあの丘が
飲み干したなら 砂を入れておいで
そしてもう一度丘を築こう
高く高く
今度こそ誰かが気づくように